今月のテーマ
歌才湿原
[北海道寿都郡 黒松内町]
北海道の南西部、札幌と函館のちょうど中間に位置する寿都郡(すっつぐん)の黒松内町(くろまつないちょう)。2400人ほどが暮らすこの町は、『ブナ北限のまち』として知られ、その豊かな自然環境の保全・再生に取り組んできました。町の中心部からほど近いエリアにある『歌才(うたさい)湿原』は、そうした取り組みの結果、守り伝えられている場所の一つです。
5.5ヘクタールに及ぶこの一帯には、湿原ならではの自然が豊かに残っています。毎年6月にはエゾカンゾウが一斉に咲き、湿原の中央を走る国道5号線から黄色の絨毯が望めます。
歌才湿原は、北海道内最古の高層湿原として、長年にわたり植物生態学などの研究者の間で注目されてきました。高層湿原とは、低温・過湿な環境下で長い年月をかけて形成される湿原の一つ。雨や雪などでできた水たまりに生育した植物が枯れて水底に堆積し、やがて泥炭※になり蓄積される── そんなサイクルを積み重ねることで、周囲より高く盛り上がった湿原になります。栄養分が極めて乏しい環境であるため、そうした条件を好むミズゴケやモウセンゴケなどの植物が生育し、ほかでは見られない生態系を形づくります。
※枯れた植物が部分的に分解された状態で堆積してできた有機質の土のこと。
コメント